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百合とかGLとかガールズラブとか、いっぱいいっぱい書きたいですvv

 
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2009年02月15日
バレンタインの贈り物

「ただいま。
 …って、何このにおい!?」
「うわっ、桃香、もう帰ってきたのか!?」
「い、いったい何なの?」

外出から予定よりも早く帰ってきた桃香を迎えたものは、
異様な悪臭だった。
悪臭の発生源は台所…のコンロにかけられていた鍋の中にある、
炭化した物体だった。
桃香はいそいで部屋中の窓を開け、悪臭を追い出そうとした。
(寒いから部屋で暖まろうと思ってたのにー)



「あきれた」
「しょうがねーだろ。
 こんなこと、滅多にすることじゃないしよ」
「だからってね、
 チョコを直火にかける人がどこにいるのよ。
 それも強火で。
 すっかり焦げちゃってるじゃない。
 まだ部屋の焦げ臭さが消えないし、あの鍋もう使えないよ」
「…ごめん」
「どうしてこんな慣れないことをするかなー?」
「だって…」

由真は少しばつが悪そうに桃香から顔を逸らしていた。
それは、料理に失敗したことを恥じているという感じではなく、
どちらかというと、照れくささを覚えているような表情だった。

それは、桃香以外には決して見せることの無い顔。
それを見た桃香は、
姉が何をしたかったのかが何となくわかった気がした。
台所を見たところ、手付かずの炭化の危機を免れたチョコがまだ残っている。
いつになく落ち込み気味の姉を元気付けたい、
そんな気持ちが桃香の中に生まれた。



「お姉ちゃん、チョコまだ余ってるみたいだから、
 ガトーショコラ作ろうか?」
「…ガトーショコラ?ンなもん…作れねーよ」
「私が作るわよ」
「ま、待てよ!それじゃあ意味が…」

そのときの由真の態度で、
桃香の憶測は確信へと変わった。
姉は私のためにわざわざ手作りチョコを作ってくれていたんだと。

そして、嬉しくなった。
別に出来合いのものを買ってくれるだけでも十分嬉しいのに、
わざわざ自分のために慣れないことをしようとしてくれたことに。
だから、そんな姉の気持ちをを無にしたくはない、
そういう気持ちが桃香の中に芽生えていた。



「じゃあ、いっしょに作ろうよ。
 お姉ちゃんのわからないところは、私が教えるし」
そんな桃香の提案に由真は、少しだけ間をおいたが、
しばらくして少し明るくなった表情で返した。
「…ああ!」
由真がそう返事をしたとき、
部屋の中に充満していた焦げ臭さはすでに無くなっていた。



「なるほど、
 ボウルにチョコを刻んで入れて、
 それをお湯の入った鍋に入れて溶かすのか。
 …で、なんて言うんだったっけ?」
「湯せんよ、湯せん」
「あ、そうだっけ」
やはり由真は料理に関してはかなりの素人、
桃香の指導無しでは、とても先に進めることなどできるはずもなかった。
下手したら、先ほどのような惨事を再度引き起こしかねなかった。



「そういえば…」
「何だ?」
「お姉ちゃんとこうして台所に立つのって、初めてだよね」
「…そうだな。あたし、料理しねーし」
「お姉ちゃんがエプロンしてるところとか、初めて見たもん」
「う、うるせえな」
いつも勝気で活発な由真だが、
この時ばかりは恥じらいの表情を見せていた。
桃香はその表情をとても愛らしく思っていたが、
それを言うとせっかくのこの機会が台無しになりそうな気がしたから、
黙って気付かないふりをすることにした。

どうにもぎこちない由真に対し、
桃香は時折鼻歌を交えるくらい終始上機嫌で、
的確かつスムーズに作業をこなしていた。



それからしばらくして、ガトーショコラは焼きあがった。
桃香はホール状のガトーショコラを切り分け、2人分をテーブルに置いた。
テーブルの上には、
いつのまにか桃香が準備したティーセットが置かれている。

「できたねー」
「ああ…」
「どしたの?」
「いや…桃香はやっぱりすげーなって思って」
「ど、どうしたのよ、いったい」
突然の姉からの言葉に戸惑う桃香。

「だってお前、料理が上手で、
 こんなのだってすぐに作れてしまうし…。
 あたしなんて、チョコ溶かすことでさえできなかったのに。
 今日のチョコだって、桃香のために作ろうと思ったのに、
 結局桃香の手を借りることになっちまったから…」
由真はそう言いながら、表情がまた料理前のものにまた戻りつつある。
そんな姉をみて、桃香は言った。
「別に、いいよ。
 私たち趣味とか違うから、
 あまり一緒に何かをやるってことがなかったでしょ?
 だから…今日いっしょにお菓子作りができて、すごく嬉しい」
そう言う桃香の顔は、まるで桃のようにほのかに赤くなっていた。
「桃香…」
少し曇りがちだった由真の顔は、
その瞬間一気に晴れやかなった。
そして、やっぱり桃香にはかなわない、
桃香はいつもそばにいてほしい、そう思う由真だった。

「さ、早く食べよ。かたくならないうちに」
「ああ、そうだな」



2人で作ったガトーショコラは、
苦さと甘さがうまく調和して、とてもおいしかった。
由真にとって、それはまるで、
今日の惨事から現在の至福への過程を表現しているように思えた。

「あげるつもりが、もらっちまったな」
「何?」
「なんでもねえよ」

桃香と2人で共同で何かを作り上げる喜び、
由真にとってはそれが、バレンタインの贈り物のような気がしていたのだった。

「お姉ちゃん」
「何だ?」
「…ありがと」
「何が?」
「何でもないよ」
「なんだよそれ、気になるだろ」
「お姉ちゃんだって言わないから教えてあげませーん」
「ンだよそれー?」

口には出して言わないが、
桃香もまた由真と同じような気持ちになっていたのだった。



(END)



↓ 後記ですよん


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「あきれた」
「何度も言うなよ」
「本気で濡れて帰るつもりだったの?」
「だって・・・仕方ないだろ?」
「ちゃんと傘もって出なかった人が悪いんです」
「うっ・・・」



昇降口で待っていたのは、やはり桃香だった。
由真はようやく自分の知っている存在を確認したことで、
安心感を抱いていたが、
会って早々思い切り愚痴られてしまい、
決まりの悪い思いをしていた。

「あーもーうるせぇなー。
 それより、桃香お前いったいどこ行ってたんだよ?
 教室にも保健室にもいなかったし」
桃香の愚痴を振り切るように強い口調で問う由真だったが、
それに対し桃香は、
「・・・別に」
と、目をそむけてそっけなく応えるだけだった。
(ったく、カンジ悪ィな・・・)
いつものこととはいえ、桃香の態度にいら立ちを覚える由真だったが、
目の前にいる桃香の姿にどこか違和感を感じていた。



「・・・お前、カバンは?」
由真は桃香に対して感じていた違和感に気付き、そこを突いた。
「え?あ、そ、それは・・・」
先ほどの反応とは打って変わり、動揺する桃香。
よく見ると、桃香は通学用のカバンを持っていなかった。
普通、登下校するときは教材の入ったカバンを持っているものだ。
もっとも、教材を入れず、筆記用具と携帯電話といった、
その人にとって最低限必要なものしか入れない者もいるが、
それでもカバンくらいは持っているものである。

その代わりに桃香が持っていたのは2本の傘。
一つはきちんと巻かれているもので、
もう一つは半開きになってぐっしょり濡れている。

由真はもう一度桃香を見てみた。
よく見ると、少し濡れている。
特に足元は土を含んだ水で汚れていた。

由真にはわかった。
桃香はずっと学校にいたわけではない。
一度は外に出たのだ、ということを。



「まさかお前、一度帰って戻ってきたのか?」
由真は驚いたような口調で桃香に聞いた。
「そ、そんなこと・・・」
桃香は反論しようとするが、言葉が続かない。
「そんな、お前、わざわざ・・・」
由真にはもうわかっていた。
桃香は一度家に帰っていたことを。
そして、自分のためにわざわざ傘を持って学校に戻ってきてくれたということを。



少しの間桃香はうつむいたまま黙っていたが、
ようやく重い口を開いた。
「だって、お姉ちゃんなかなか帰ってこないし、
 それで傘立て見たら、お姉ちゃんの傘があったから、
 きっと傘忘れて出ちゃったんだなって思って・・・
 だから・・・」
桃香の声は次第に小さくなり、やがて雨の音にかき消されて聞こえなくなった。
が、
「あー!もう!いいでしょ!?
 せっかくわざわざ持って来てやったんだから、コレ使ってよね!!
 はい!!」
桃香はいきなり顔を上げると突然大きな声を上げ、
きれいに巻かれた方の傘を由真に差し出した。
そんな桃香の顔は、なぜか赤かった。
「な、なんだよ?」
突然の桃香の剣幕に戸惑う由真だったが、
迫力に押されて思わず傘を受け取るのだった。
「さ、帰るからね」
桃香はそう言うと由真にそっぽを向け、半開きの方の傘を差し、校門の方に向かった。
「あ、ちょっと、待てよ!」
呆気にとられてた由真だったが、
桃香が帰ろうとしているのに気付くと、彼女のあとを追いかけるのだった。



「待てってば」
由真は雨の降りしきる中、桃香を追っていた。
最初はそれを振り切るように早足で歩いてた桃香だったが、
何度も呼ばれているうちにやがて、速度を緩め、そして止まった。
そして、ついに由真の呼びかけに応えたのだった。
「何よ」
少しだけ沈黙の時間があったが、
その後由真はそっと口を開いた。


「桃香、その・・・ありがとな」


由真は後ろから、
優しい口調で感謝の言葉を桃香に贈った。

そんな由真の言葉に対し桃香は
「べ、別に・・・たいしたことじゃ・・・」
と、ぎこちない口調で返すのだった。



由真からは桃香の顔を見ることはできなかった。
桃香が反対方向を見ていた上に、
傘で桃香の顔が完全に隠れていたから。
いや、隠れていたというよりも、
隠していたというほうが正しいかもしれない。



「私はただ、お姉ちゃんがこのまま帰れなくて、
 寂しい思いをさせるのはかわいそうだなって思っただけなんだから。
 お姉ちゃん寂しがりやだから泣いちゃうかもしれないし」
相変わらず憎まれ口ばかり叩く桃香。
「とにかく、わざわざお迎えに来てやったんだから、
 後でいっぱいお礼してもらうんだからね」
桃香の言葉に由真はただ「へいへい」と返すだけだった。
あながち間違いではないだけに、
早いところそんな話を終わらせたいという気持ちもあったから。



「それに…この雨のなか1人だけ家にいるのも、
 何だか自分ひとりだけ取り残されたみたいでイヤだし…」
ぼそりとそうつぶやく桃香。
それは小さな声だったが、
雨音にかき消されることなく由真の耳に入ってきた。
「桃香…?」
桃香の言葉に反応する由真。
「あ、いや、別に寂しかったとか、
 そういうわけじゃないんだから!
 勘違いしないでよね!」
まさか聞こえたとは思っていなかったようで、
桃香はまた必死になって誤魔化そうとしていた。



そんな桃香の後ろで、
由真はひとり考えていた。



  そっか…

  桃香は家に帰っても私がいなきゃ、1人きりなんだよな。

  そして私も、さっきまで1人きりだった。

  慣れたはずの場所だったのに、何ともいたたまれない気持ちだった。



  桃香もまた、家で1人、いたたまれない気持ちだったんだ。



  あの時間の私と桃香、同じ気持ちだったんだな・・・



「桃香!」
「な、何…きゃっ」



由真は自分が差していた傘をたたむと突然、
桃香の傘の中に入った。
「な、何なのよ、いきなり」
「へへ、何かこっちの方が良くてさ」
由真は幸せそうな顔をしてそう言った。
「どうしちゃったのよ?」
突然の由真の奇行に戸惑う桃香だったが、
そんな桃香を気にすることなく、由真は言葉を続けた。
「ここだと、桃香の顔も見えるしな」
「な、何を言って…。
 ていうか、入りきれないってば。
 濡れちゃうじゃないの!」
桃香はとにかく由真を傘から出そうと必死になっていたが…



「うーん、じゃあ、こうすればいいだろ?」


きゅっ


「あ・・・」
いつの間にか桃香は、
自分の体が由真の体に密着していることに気付いた。
落ち着いてみると、由真が自分の腰に手をあて、
抱き寄せているのがわかった。

「な、何なのよ、一体…」
「嫌か?」
「べ、別にそんなわけじゃないけど…」

恥ずかしい。
なのに、なぜかとても落ち着いてる。
桃香はそんな不思議な感覚に浸っていた。



「これなら、濡れないだろ?」
「…うん」



先ほどまで反抗的だった桃香も、
すっかり穏やかになり、
いつしか自分から由真に寄り添うようになっていた。



1つの傘の下で身を寄せ合う2人。
辺りはすっかり暗くなっており、
雨のせいで身を刺すほどに気温は下がっていたが、
傘下の2人は身も心も温めあっていた。



「桃香」
「何?」
「もっと顔、見せてくれないか?」
「な、何よ…いつだって見れるくせに…」



由真と桃香は家族なんだから、
いつも顔を見れるのは当たり前のこと。
しかし、今の由真にとっては、それがとても幸せなことなのだと感じていた。



「桃香」
「今度は何よ?」
「迎えに来てくれて、ホントありがとな」
「…いいってば。私は…お姉ちゃんが帰ってきてくれれば…」



あれほど激しく降っていた雨も、今は小康状態になっている。
しかし、今は家に帰りつくまで止まないでほしいという気持ちを、
口には出さないものの、2人は抱いているのであった



(END)



↓後記ですよん



続きを読む

「ちっ、まだ降ってやがる」
由真は学校の教室の窓から外を見ながら、
悔しそうにそう言った。

ただ今の時刻午後4時前、天候は雨。
空は分厚くどす黒い雨雲に覆われていて、
それは大粒の激しい雨を降らせていた。
つい2時間ほど前まで空は青く澄みわたっていたというのに。

周りを見ると、もうみんな帰ろうとしているか、
部活の準備をしていた。
由真も帰ろうとはしているのであるが、
帰れない状況である。
それは、雨をしのぐための傘が無いから。
置き傘なんてものも、してはいなかった。

友人の絵里子に傘に入れてもらうよう、
お願いしようと思ってはいたが、
絵里子はすでに自分と同じく傘を持ってなかった香田と一緒に帰ることにしていたようだった。
さすがに1つの傘の中に3人は入らないだろうし、
最近恋人として付き合い始めたあの2人の間に割り入るのは気が引け、
結局声はかけなかった。
綾乃は下高谷とデートの約束があるらしく、
終礼が終わるや、鼻歌を歌いながら脱兎の勢いで教室を飛び出していった。
このクソ雨の中、いったいどこに行くのやら。

誰かから借りる、それもできないことはないだろうが、
この悪天候では、誰もが傘が必要なはず。
複数傘を持っている人からは借りられるかもしれないが、
そんな生徒は少数派だろう。
その少数派の人を求めて聞いて回るのは、正直恥ずかしい。
結局誰からも傘を借りなかったのだった。



「桃香の言うこと、聞いときゃよかったな」
またも悔しそうにつぶやいた。
そして、思い出していた。
今朝、妹から忠告されていたことを。


 『今日は雨が降るっていうから、傘ちゃんと持って出てよね。
  ゼッタイなんだから』
 『へーへー、わーったわーった』
 『ゼッタイだからね。雨が降って傘がない、なんてことになっても知らないんだから』
 『わかりましたって。しつけーなー』


しかし、結局傘を持っては出なかった。
だって、今朝は雲ひとつ無き好天で、
それがまさか今のような事態になるなど、考えもしていなかったから。



桃香なら今日の悪天候に備えて最低1本は傘を持っていることだろう。
そうすれば傘に入れてもらうこともできるだろうし、
置き傘があれば借りることもできる。
そう考えもしたが、
今朝桃香の忠告を無にしてしまったことを考えると、非常に頼みづらい。

結局由真は、雨足が弱まるまで教室で待機することにしたのであった。
うん、それがいい。
止まない雨なんて無いのだから。



ただ今の時刻午後5時過ぎ、天候は雨。
由真はまだ教室にいた。
雨足が弱まる気配は全く無い。
その上、空は次第に暗くなり始めていた。
もともと空は雨雲に覆われていて重々しい雰囲気だったのだが、
夜になりつつあるということで、
ますます暗みが増してきているのであった。
「こんなことなら、恥を忍んででも傘借りときゃよかったな」
由真は変なプライドにとらわれて、
傘について聞いて回らなかったことを後悔していた。

そして、最も気軽に使える手段を活用しなかったことについても後悔していた。
「桃香のヤツ、もう帰ってるんだろうな」
そう思いつつも由真は、わずかな期待を抱き、
今更ながらに桃香の教室、1年桃組に足を運んでみることにした。

しかし、予想通りというか、
案の定、そこに桃香の姿をうかがうことはできなかった。
保健委員だから保健室にいるのではと考えもしたが、
そこにも桃香はいなかった。
どうやら桃香はすでに帰っているようだった。



結局自分の教室に戻ることにした由真だったが、
その途中、廊下の窓から校門のほうを眺めた。
先ほどから車が校門に入っては、
生徒を車に入れて出て行くところを目にする。
おそらく、豪雨のため帰ることができない娘を家族が迎えに来ているのだろう。

この手段は、由真には使えるはずがなかった。
車で迎えに来れるような家族はいないから。
両親は仕事で長いこと海外で暮らしているため、頼ることはできない。
歳の離れた姉もすでに結婚していて、離れたところで暮らしている。
頼れる肉親といえば、桃香だけ。
しかし、その桃香ももうすでに学校を出てしまっている。
結局由真にできることは、雨足が弱まるのを待つだけ。



ただ今の時刻午後6時ちょうど、天候は雨。
雨足は相変わらず。
教室には由真1人。
クラスメートたちは部活動参加組も含めて、
もうほとんどが帰路についていた
教室の電灯は点けていたが、
外はかなり暗くなっているため、電灯の光がいつもよりまぶしく感じる。
由真1人のために照らす光としては、
あまりに強すぎるような気がしていた。
そしてそれが由真の孤独感を強めているような気がしていた。
じゃあ電灯を消せばいいのか?
消したら消したで、重々しい気持ちが強くなるような気がしたため、
結局点けたままでいることにした。

ここは教室。
昼間は友人たちと楽しく語り合った教室。
授業中は億劫でも、
それ以外では和気藹々としていてとっても楽しい空間。
そのはずなのに、今は・・・。



ぶるっ。

ふと肌寒さを感じた由真。
それが、豪雨による気温の低下が招いたものだったのか、
現在の由真の心境から来たものなのかはわからなかった。
ただ、その悪寒を感じた瞬間、
由真は一刻も早くここを出たいと思うようになっていた。
外はまだ雨が容赦なく降っている。
そしてその雨をしのぐ手段はない。
でも、かまわない。
ずぶ濡れになったって、かまわない。
帰れば風呂に入って温まることだってできるのだから。
それに、桃香だっているから。
桃香の作った温かい夕食だって食べられるのだから。

「決めた!早く帰ろう!」
自分の心にエンジンをかけるようにそう言うと、
由真は素早く立ち上がり、教室を後にした。
そして、駆け足で昇降口へと向かった。

廊下を駆けていても、もう誰ともすれ違わない。
まるで自分1人だけがこの世界に取り残されたようで、
何とも嫌な気分だった。
一刻も早くこの場を脱したかった。
そして、早く桃香の顔が見たかった。
桃香の顔を見れば、きっとこの心のモヤモヤは氷解する、
そう思ったから。



「!!」
由真は突如人影が現れたのに気付き、足を止めた。
「あれは・・・」
遠く離れていても、由真はすぐに気付いた。
体型、髪型、そして何よりも雰囲気。
見間違うはずがない。
その人影は、由真が一番知っている人のものだ。

そして、その人影も由真の存在に気付き、呼びかけてきた。

「お姉ちゃん?」



(END)



↓後記&拍手へのレスです☆


続きを読む

2008年07月07日
星に願いを

それは7月に入ってしばらく経ったある日の夕方のこと。
桃香は押入れの中を探していた。
これから夏本番に差し掛かるにあたって、
暑さ対策に必要なものを探すために。
これは、そのなかでとある段ボール箱を見つけたときの話。



「何かしら、この箱?」
見慣れない箱だった。
段ボールに印刷されている内容・くたびれ具合を見ると、
少し昔の箱のようである。
桃香はその箱の中身に興味を抱いた。
「何が、入ってるのかな?
 開けてもいいのかな?」
興味のある一方で、開けていいものなのか少し不安もあったが、
別に老化を促す煙が出るわけでも、
この世のあらゆる災いが出てくるわけでもない。
期待はずれのものならば、また閉じればいいだけの話。
「開けちゃえ」
と言って、桃香はその箱を開いた。



「へぇー」
中身を見て、桃香は思わず声を出す。
中には、昔桃香が使っていたおもちゃ、教材などが入っていた。

興味が深まり、より中身を探る桃香。
すると、あるものに目が止まった。
「これ、昔作った七夕飾り…」
桃香が幼いころ―おそらく幼稚園に通ってた頃―に作った七夕飾りがたくさん入っていた。
色とりどりの星飾り、網飾り、
そして、そのころに書いた短冊も。

「どんなこと、書いてたのかな…?」
もう覚えてもいないのに、妙に懐かしい感情を覚えた桃香は、
昔の自分を見てみたくなり、その短冊を見てみた。
幼稚園に通ってたころに作ったもの。
字はかなり稚拙で読みづらかったが、
それでも読めないことはなかった。


  ………!


むしろ、すんなり読むことができたと言ってよかった。
頭の中では忘れていても、
そのころの記憶が自分の中のどこかで残っていて、
短冊を見た瞬間、それが呼び起こされたからようであったから。
そして何よりも、
それが現在の自分の気持ちに繋がる言葉だったから。



「桃香、どうしたんだ?
 やけに嬉しそうだな?」
やけに上機嫌に居間に戻った桃香を不思議そうに見ながら、
由真は聞いた。
それに対し、桃香は
「ふふ、なんでもないよ」
とだけ返した。
何でもないってことはないだろ、と言いかけた由真だったが、
せっかく機嫌がいいところに水を差すのも悪いと思い、
それ以上の追及はしなかった。



桃香は自分の部屋に入り、
一人その短冊を眺めていた。
そして浸っていた。

―今も昔も変わらぬ、大切な大切なその想いに。



桃香は短冊をお気に入りの小箱にしまうと、
部屋からベランダに出て、空を見ていた。
日は沈み、夕焼けに代わって現れたのは、
満天の星空。
あのころと全く変わってない星空。
大好きな、あの人と見上げた星空。



「桃香?何してるんだ?空ばっか見て」
ベランダに出た桃香のことが気になり、声をかける由真。
「あ、お姉ちゃん。
 星が綺麗だったから、つい」
「どれどれ…
 …ホントだ。すげーな」
桃香に示された星空を見上げ、
由真も釘付けになっていた。
「そういや今日、七夕だったよな
 やっぱ七夕って夜空が綺麗になるモンなのかな?」
「…かもね」
少しくすっと笑ってそう返事をすると、
桃香は由真に寄り添った。
そして由真もそれをやさしく受け入れた。
星空の下、2人だけの静かな時間が流れていく…。



あれからかなりの月日が経ったけど、
何も変わらない。
お姉ちゃんがそばにいることも、私の気持ちも。
この想い、あの頃からの想い、大切にしたい。
きっと、ずっと、これからも…。



   ずっとおねえちゃんとなかよしでいられますように

                           すずきももか



(END)



   ↓後記なのだ

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Author:チカ
女の子と女の子が女の子どうしで女の子し合う話が大好きですvv
同級生百合や姉妹百合が私の嗜好。
けど、上級生×下級生もやっぱ好きvv

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